大本彩華 自己紹介へ

家が育つということ

公開日:2026/09/28(月) 更新日:2026/09/28(月) 現場のこと|日々の気づき

こんにちは。

津山市の工務店、息吹木の家専務の大本です。

ここ最近、5年点検と10年点検に伺う機会が続きました。

5年を迎えたお家。

10年という節目を迎えたお家。

それぞれのご家族の暮らしの中に、久しぶりに入らせていただく時間が続いています。

ちょうど同じ時期に、新築工事も進んでいます。

これから暮らしが始まる、建ったばかりの家。

そして、5年、10年と暮らしを重ねてきた家。

その両方に触れる中で、あらためて感じたことがあります。

それは、家は建てて終わりではなく、暮らしと一緒に育っていくものだということ。

家は、建てたときが完成ではない

新築のとき、きれいで快適な家に喜んでいただけるのは、ある意味では当たり前のことだと思っています。

新しい木の色。

きれいに整った室内。

まだ傷のない床や、使い始めたばかりの家具。

完成したばかりの家には、そのときにしかない清々しさがあります。

私たちも、お引き渡しのときに喜んでいただけることは、本当に嬉しいです。

でも、本物の素材を使った家の良さは、その瞬間だけではないなぁと。

暮らしが始まり、毎日の時間が重なることで、少しずつその家らしい表情が生まれていく。

木の色はゆっくりと深まり、艶が増していく。

家具も少しずつ使い込まれ、ご家族の暮らしに馴染んでいく。

新築の頃とは違う、落ち着いた空気が家全体に生まれていくのを感じます。

5年、10年と育っていくもの

建てたときも、もちろん大満足。

ただ、5年が経つと、そこに5年分の暮らしが加わります。

味わいを増した木。

使い込まれつつある家具。

ご家族の暮らしに合わせて、自然と居場所が決まっていったものたち。

それらが一つになって、新築のときにはまだなかった心地よさをつくっている。

無垢の木が少しずつ表情を変えながらも、家の中には木の香りを感じられる空気が残っていて。

そのことにも、本物の素材を使う意味があるのだと強く思います。

 

10年が経つと、家の中にはさらに多くの時間が積み重なっています。

床や柱についた小さな傷も、ただ古くなったということではありません。

その家で過ごしてきた日々や、ご家族の歴史の一部になって。

家が暮らしに馴染み、暮らしもまた家に馴染んでいく。

 

 

点検でお住まいを訪ねるたびに、建てたときにはまだなかった魅力が育っていることを感じます。

そして、これから15年、20年と年月を重ねる中で、その味わいはさらに深くなっていくのだと思います。

 

メンテナンスや点検は、不具合がないかを確認するためだけの時間ではありません。

建てた家が、その後どのように育っているのか。

ご家族の暮らしに、どのように馴染んでいるのか。

私たちにとって、それを見せていただける大切な機会でもあります。

 

新築工事と点検が同時に続いたからこそ、家の「今」だけでなく、その先に続く時間をより強く意識しました。

図面を描いているときには、どうしても完成した姿を思い浮かべます。

けれど、本当に大切なのは、完成した日から始まる暮らし。

 

5年後、10年後に訪ねたとき、建てたときよりもさらに愛着を持って暮らしていただけていること。

それが、家づくりに関わる私たちにとって、とても嬉しいことだと感じています。

 

「今がいい」から、「永くいい」へ

 

設計する立場として、「今がいい」ことはもちろん大切です。

住み始めたその日から、心地よく、使いやすく、安心して暮らせること。

そのうえで、5年後も10年後も心地よく、年月が経つほどに愛着を持てる家であること。

素材がどのように変化していくのか。

暮らし方が変わっても、無理なく使い続けられるのか。

日々のお手入れや、将来のメンテナンスまで含めて考えられているのか。

完成した日の姿だけではなく、その先の暮らしまで想像しながら設計することが大切だと、あらためて感じました。

 

建てたときも100点。

そして、5年後には5年分の味わいが加わり、10年後には10年分の歴史が重なっている。

そんなふうに、時間とともにさらに好きになっていただける家をつくりたい。

これからも、永く心地よく、永く愛していただける家づくりに向き合っていきたいと思います。